コラム「経営に役立つ会計」

2011年5月1日

「業績見込と固定費負担の経営判断」

CSAJ 監事 公認会計士 山田隆明

◆インデックス
<管理会計理論 1>
利益計画においては、
「固定費」を限界利益で回収していき、回収しきったところが損益分岐点である。

<管理会計理論 2>
「 固定費負担」が重荷になるかならないかは、企業業績の善し悪しによる。

<テーマ>
業績が悪化しても固定費負担に耐えられるよう慎重な経営判断が要求される。

<経営課題>
1.資産を自社で持つべきか持たざるべきか?

2.人材のリストラ等は是か非か?

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<管理会計理論 1>
◆企業の存続上必要最低限な全社の利益額を計画したら、
次は、具体的に何を売って利益をあげるかを計画する。

○管理会計の教科書には、取扱商品のうち限界利益率の高いものから順に優先的に販売して、固定費プラス目標利益を回収するところまで販売するよう計画すべきとある。
(限界利益とは売上高から変動費を引いた利益で、売上高に対する比率が限界利益率である。)
これをセールスミックスのCVP分析という。

○教科書的の是否はともかく、
ここで重要なのは、固定費を回収するという考え方である。
利益率の高いものから順に限界利益で固定費を回収していく。
回収しきれれば赤字になることはないのである。

○設例
Q.
売価いずれも100円のA製品とB製品を取扱っており、
A製品は限界利益率60%、生産能力 50個、
B製品は限界利益率40%、生産能力100個、
固定費の発生額5,000円とする。
赤字にしないためには、A製品、B製品を最低何個販売しなければならないか?

A.
A製品の方が限界利益率が高いのでA製品を優先して販売する。

A製品を生産能力いっぱいの50個生産して販売したときの限界利益は
100円×60%×50個=3,000円なので、
まずA製品で固定費5,000円のうち3,000円を回収する。

残りの固定費2,000円をB製品の限界利益で回収するには、
2,000円÷(100円×40%)より、
B製品を50個販売すればよい。

したがって、A製品、B製品ともに50個づつ販売すると、限界利益が5,000円になり、
最も効率的に固定費を回収できる。

ここが損益分岐点であり、これを上回って販売すれば上回った余力分が利益になる。

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<管理会計理論 2>
●このように、
固定費を回収しきれれば赤字になることはない。

●ところが業績が悪くなると、
「固定費負担」がずしりと重くのし掛かってくる。

通常のときなら変動費と固定費を合わせた総コストは一定であり、
固定費を変動費化しても影響はない。
これに対して、業績が悪くなると変動費は下がり利益にプラスに働くが、
それ以上に売上も減るため利益はそれ以上にマイナスに働いてしまう、
そのうえ固定費は不変のままなので固定費負担が重くのしかかるのである。

したがって【業績の良いときは固定費は有利に働くが、悪いときは不利に働く。】
これを経営レバレッジという。

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●<テーマ>
そこで、固定費をそのまま固定費にしておくか、それとも変動費化して固定費負担を減らすかの経営判断が求められる。

固定費負担に押し潰されて潰れていく会社がいかに多いことか。
これからの日本企業で固定費がむしろ有利に働くところはどれだけあるだろうか。
まかり間違えば倒産にもつながりかねず慎重な経営判断が要求されるところである。

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◆<経営課題 1>
資産を自社所有すべきか、それとも賃借するか?

たしかに、自社所有しても賃借してもいずれも固定費に変わりはない。
しかし、自社所有すると長期間にわたって固定費として拘束されることになる。

Q.
「持つ経営」か「持たざる経営」か?

A.
(1)業績見込が右上がりで安定しているときは「持つ経営」で良いが、
(2)【業績見込が悪いときや不確実性の高いときは、「持たざる経営」をすべきである。】
自社ビルでなく賃借に。
買い取りでなくレンタルに。
ソフトはSaaSに。

◆<経営課題 2>
さらに問題は、業績見込が悪いため、持たざる経営と称して「人材カット」を行う会社があるのは是か非か?
リストラ、派遣、賃下げ、中国人労働者など。

Q.
たしかに、正社員の人件費は大きな固定費である。
これを変動費化できれば固定費負担はかなり楽になる。
しかし、このような対応はいかがなものか?

A.
要は「士気」の問題である。
他の従業員がリストラされるのを見て、仕事のヤル気が涌くであろうか。

わが国の高度経済成長は終身雇用が保証されていたから達成し得たともいえる。
リストラ等を心配することなく仕事に誠心誠意打ち込めたためである。
いくら「持たざる経営」とはいえ「人材リストラ等は安易に行うべきではない。」

べつに人を増やせと言っているわけではない(増やす余裕があれば増やせばよいが)、
安易に減らすのは良くないと言っているのである。
人減らしよりも、現状の人材能力の有効活用を図るほうが先である。

■従業員の能力を発揮させられるかどうか、
【ヒトの能力を有効活用できないことが、会社にとって、最大のムダである。】

■リストラ等を検討するよりも、
新たなマーケットを開発し、営業を強化し、売上アップを目指すほうが有効である。

筆者略歴

山田 隆明(やまだ たかあき)
山田隆明公認会計士事務所 所長
公認会計士・税理士・ITコーディネータ
URL:http://cpa-yamada.com/category/1304992.html
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1959年 名古屋市生まれ。東海高校、慶応義塾大学経済学部卒業。
株式会社インテック(基幹業務パッケージソフトの企画及び販売)、
監査法人(会計監査)を経て、
2003年 山田隆明公認会計士事務所開業、現在に至る。
−−−税務だけでなく、経営者会計<管理会計、経営指導>を。
2009年9月に社団法人コンピュータソフトウェア協会監事に就任。

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