コラム「経営に役立つ会計」

2011年7月1日

「キャッシュフロー経営」
--経営管理には、利益かキャッシュか?--

CSAJ 監事 公認会計士 山田隆明

◆初めてお会いする社長さんに会社の状況についてお尋ねしますと、
みなさん「当期の利益状況」について語ってくださいます。

●たしかに、「当期の利益」は重要な経営指標です。
たとえば、予算を作って管理するうえでは利益を評価基準にしますし、銀行や税務署の関心も利益にあります。
このように、「利益」は、業績評価や外部報告にとっては最重要な経営指標ですが、
自社の経営管理とくに経営意思決定にとってはどうでしょうか?

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●私は、「自社の経営管理にとって最も重要な指標は何か?」と聞かれれば、「キャッシュ」と答えます。
「キャッシュ」「お金」「資金」「現金預金」と、呼び名はいろいろですが、どれも同じです。

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●それはなぜでしょうか?

(1)キャッシュは、会社が生きていくために必要。
「キャッシュ」は人に例えれば「血液」にあたります。
血液が回らなくなれば、人は生きて行けなくなります。
(ただし、血液を回すために生きているわけではありませんが。)

会社も同様にキャッシュがなければ、営業活動ができなくなり存続できません。
(ただし、キャッシュを増やすことを会社の「目的」にすべきではありませんが。)

仕入代金や給料は利益で支払う訳にはいきません、キャッシュでなければなりません。

(2)キャッシュは、会社が拡大していくために必要。
会社はチャンスを着実に捉えて拡大を図り、結果として社会に貢献していくべきものです。
しかし、キャッシュが足りなければ、目の前にせっかくのチャンスがあってもトライすることもできません。
ただ指を咥えて見ているほかはありません。

設備投資もやはり利益で支払う訳にはいかず、キャッシュの蓄積が必要です。
いつ訪れるか分からないチャンスをものにするには、日頃からキャッシュの備えをしておくことが大切です。

(3)キャッシュは、リスクに備えるために必要。
今回の東日本大震災では多くの方が被災され大切な家族や財産を失われました。
また、多くの会社が社員や資産を失われ、廃業等を余儀なくさせられました。
しかし一方では、資産を失いながらも再スタートにこぎつける会社もあります。

再スタートするには、「社長の想い・熱意」「社員のやりがい」ももちろん重要です。
それらにプラスして、「キャッシュ」が重要です、キャッシュがなければやはり営業活動は回りません。
ここでもやはり、目に見えない利益ではなく、実在するキャッシュがなければなりません。

とはいえ、廃業に追い込まれた会社のことを、キャッシュをもっていなかったからダメだと言うわけでは毛頭ありません。
あれだけの大震災ですから廃業するほうが普通でしょう、再スタートできる会社は素晴らしいと思います。

いつ何が起きるかわからないリスクに備えるために、キャッシュをしっかりと守っておくことは大切なことです
(ただし、言うは易しですが)。

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●ところが、会計の本によっては「最も重要な経営指標は利益である」と書いてあるものもあります。
これはどういうことでしょうか? 私とその本のどちらかが間違っているのでしょうか?
いいえ、どちらも間違ってはいません。

○上で述べましたように、業績管理や外部報告のためには、利益の方がキャッシュより有益です。
なぜなら、利益の方が「客観的」だからです。
キャッシュは、回収や支払を早めたり先延ししたりすれば容易に操作が可能です。
しかし、利益は簡単には操作できません。
そのため、キャッシュは「客観性」を重視される業績管理や外部報告には不向きなのです。

○しかし一方で、利益は「概念的」なものにすぎないのに対して、キャッシュは「実在する」ものです。
平たく言うと、キャッシュでモノは買えますが、利益でモノは買えません。
ですから、経営管理にとっては「キャッシュが重要」なのです。
よく「お金のせいで苦労した」とは言いますが、「利益で苦労した」とは言いません。

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●では、一般に会社はキャッシュが十分に足りているものでしょうか?
十分に足りているとは、大きなリスクが発生してもなんとかやっていける会社です。
私が見るかぎりそのような会社はあまり多くないと思います。
とは言っても、キャッシュが十分にないからこの会社はダメだと言っている訳ではありません。

○大切なのは、
(1)「まだまだキャッシュは足りない」ことを自覚して、キャッシュを増やす努力を続けること。
(2)そして、いったん獲得したキャッシュを失わないように守ることです。
キャッシュを失わせる誘因は会社の内外にたくさんあります。それらは極めて巧妙に近寄ってきます。

○「節税対策」と称する謬論に嵌められてしまったり、売れない在庫を抱えてしまったり、
内部統制が甘いために社員を横領犯・窃盗犯にしてしまって自ら墓穴を掘ったりした会社がいかに多いことでしょうか!

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●利益は最善の資金調達手段ですから、利益を増やすことはキャッシュを増やすことに直結します。
しかし、利益を増やしたからと言ってすぐさまキャッシュが増えるというわけではありません。
たとえば、売上を上げても回収しなければキャッシュには行き着きません。
利益を上げてそれで終わりと考えてしまうから、上述の謬論に惑わされたり管理が甘くなったりするのです。
利益で終わりではなく、キャッシュに行き着かせるよう経営管理を行うことが大切です。

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■結論
【キャッシュを増やす努力と、守る努力を続けることがなにより大切です。】


(注)本コラムの内容は筆者個人の見解に基づいており、当協会の見解を示すものではありません。

筆者略歴

山田 隆明(やまだ たかあき)
山田隆明公認会計士事務所 所長
公認会計士・税理士・ITコーディネータ
URL:http://cpa-yamada.com/category/1304992.html
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1959年 名古屋市生まれ。東海高校、慶応義塾大学経済学部卒業。
株式会社インテック(基幹業務パッケージソフトの企画及び販売)、
監査法人(会計監査)を経て、
2003年 山田隆明公認会計士事務所開業、現在に至る。
−−−税務だけでなく、経営者会計<管理会計、経営指導>を。
2009年9月に社団法人コンピュータソフトウェア協会監事に就任。

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