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コラム「経営に役立つ会計」
2012年2月1日
「パッケージソフトウェアの会計処理」
---会計・税務と実態の乖離---
CSAJ 監事 公認会計士 山田隆明
パッケージソフトウェアの制作コストの償却は、
(1)税務上は、3年の均等償却、
(2)会計基準上は、3年以内の一定の方法(下記参照)、とされている。
(3)しかし実際には、もっと短い間(例えば1年間)しか売れないことも多々ある。
このように、会計・税務の取扱と実態には乖離があるときは、制作コストがいつまでも計上されてしまう。
最近パッケージベンダーからこういったお悩みを耳にする。
この課題にどう対処すればよいか?
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(会計基準の原則処理)
市場販売目的のパッケージソフトウェアの償却は、会計基準(*1)では、
A.見込販売数量(収益)にもとづく償却方法
B.残存有効期間にもとづく均等配分額
のいずれか大きい額とされている。
また、販売可能な有効期間の見積りは、原則として3年以内の年数とされている(*2)。
3年以内とする理由は、パッケージソフトウェアが資産性を有することと税法が3年償却であるためである。
なお、会計基準と税務との差額は税務申告書上で加算して調整する。
(課題への対処)
問題は、製品ソフトウェアが「通常発売から1年間ぐらいしか売れない」との点であり、
会計基準と実態との乖離にどう対処するかである。以下に私見を交えて対処方法を述べる。
1.現行の会計方針範囲内での対処方法
一般に会社は減価償却費を計算するために、製品の販売数量を事前に予想する必要がある。
この際に注意すべき点は、販売予測は(経理部門が勝手に判断するのではなく)実行可能な適正な予測として社内で承認されたものでなければならないことである。
そのとき、見積から乖離するリスクも考慮する必要がある。
また、複数の製品群を取扱っていて製品群ごとに異なった販売予測がされる場合には、複数の減価償却方法を会計方針として採用することも考えられる。
このようにして定めた減価償却計算の方法どおりに計算すれば、実態が「通常発売から1年間ぐらいしか売れない」ときは、(理論的には)見込販売数量に基づく償却も発売後1年間に集中し、1年後には償却はおおかた完了しているはずである。
すなわち、理論的には1年間で償却が終わり、制作コストがいつまでも計上されたままということはないはずである。
2.会計基準の要求する補正計算の活用による対処
会計基準は、見込販売数量の変動による減価償却費の補正計算も要求している。
すなわち、見込販売数量はあくまで見積であるので、販売開始以後に新たに生じる様々な要因によりズレが生ずることがむしろ普通であるとし、毎期末に見積販売数量の見直しを要求している。
この補正計算には2種類ある。
一つは、見積の修正幅が毎期経常的に生じる範囲内のものであれば、その年度の償却計算を補正し変動分を当期の損益で吸収する処理を要求するものである。
もう一つは、当初予見できなかった原因により見込販売数量の著しい現象が見込まれる場合には経済価値の著しい陳腐化として減損処理を要求するものである。
ただしこの補正計算の規定は、当初の見積が(少なくとも見積時には)妥当であることを前提にしており、当初から見積(3年間)が異常に長いというイレギュラーなケースを想定するものではない。
そのときは、会計方針を見直すか、あるいは内部管理用の財務諸表を別途作成するなどの対処が必要となる。
3.会計方針の変更による対処
有効期間3年間が実態と乖離していて財務諸表が歪められているのであれば、実態に近づけるよう会計方針を変更することを検討する方法がある。
監査法人と協議して変更を認めるよう努めることである。
とはいえ、ソフトウェアの製作費を一括して費用処理することは認められていない(*3)ため、3年を一括費用処理に近い1年にまで一気に短縮する変更は監査法人としても認め辛いところであろう。
ただここで申し上げたいのは、あくまで現行の3年を少しでも実態に近づけていくよう粘り強く協議を重ねていくべきだということである。
4.管理会計の活用による対処
上記の方法で解消できない場合は、内部管理用の財務諸表を別途作成するべきてある。
すなわち、外部公表用財務諸表と内部管理用財務諸表とを区別して作成し、外部公表用はこれまで通りに作成する一方で、社内管理用として実態に合わせたものを別途作成するやり方である。
ただし、外部に公表する財務諸表は従来どおりであるため、外部公表用の財務諸表を見るステークホルダーに映る姿(制作コストがいつまでも計上されている点)はこれまでと変わるところはない。
しかし、会社にとって貴重な情報である会計情報というものを経営に積極的に活用することは経営管理上非常に大切なことである。
実態と乖離した制度会計の情報だけではなく、内部管理用の会計(管理会計)の情報を積極的に取り入れて活用していくべきと私は考える。
注
(*1)研究開発費等会計基準四5
(*2)研究開発費及びソフトウェアの会計処理に関する実務指針18,42
(*3)研究開発費等会計基準四2
(注)本コラムの内容は筆者個人の見解に基づいており、当協会の見解を示すものではありません。
筆者略歴
山田 隆明(やまだ たかあき)
山田隆明公認会計士事務所 所長
公認会計士・税理士・ITコーディネータ
URL:http://cpa-yamada.com/category/1304992.html

1959年 名古屋市生まれ。東海高校、慶応義塾大学経済学部卒業。
株式会社インテック(基幹業務パッケージソフトの企画及び販売)、
監査法人(会計監査)を経て、
2003年 山田隆明公認会計士事務所開業、現在に至る。
−−−税務だけでなく、経営者会計<管理会計、経営指導>を。
2009年9月に社団法人コンピュータソフトウェア協会監事に就任。
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