ユースウェア委員会主催
「中小企業向けSaaSサポートビジネス支援セミナー」開催報告
去る平成21年3月9日(月)、TOSLOVE市ヶ谷にて、「中小企業向けSaaSサポートビジネス支援セミナー」が開催されました。このセミナーはユースウェア委員会が主催し、経済産業省が主導している「J-SaaS」をはじめとした、ソフトウェアの新しい使用形態であるSaaSについて、日ごろから中小零細企業をサポートしているサポート事業者やSIer、販売店、ベンダー、ITコーディネータの方々に関心を持っていただこうというのが、このセミナーの趣旨でした。当初は定員を50名としていたところ、参加申し込みが殺到し、最終的には会員企業を中心に、PC-SOSデータベース登録事業者やITコーディネータなど、70名近くのご参加をいただき、関心の高さが伺えました。
経済産業省が推進する中小企業向けSaaS事業(J-SaaS)
経済産業省
商務情報政策局 情報処理振興課 課長補佐 安田 篤氏より、「経済産業省が推進する中小企業向けSaaS事業(J-SaaS)について」と題し、行政によるSaaS普及への取り組みについてご講演いただきました。
安田氏は、まず日本国内における中小企業の生産性の低さ、景況感の悪化、そして特に従業員20名以下の小規模企業のIT化が遅れている現状を示しました。IT化が遅れている理由として「初期投資額が高額」、「高度なITスキルが必要」、「セキュリティ対策やデータ管理まで手が回らない」を挙げ、「e-Japan戦略」の流れを汲む「IT新改革戦略」において、「SaaSなど中小企業にとって使いやすい新たなサービス普及促進の環境整備」が行われることになった旨、説明されました。また、企業に対する調査を行なった結果、従業員20名以下の小規模企業においてSaaSで利用してみたい分野は「財務会計」、「給与管理」で、月額利用料金は3,000〜5,000円、これらを念頭に作られたのが「SaaS活用基盤(J-SaaS)」とのこと。
「J-SaaS」は小規模企業対象に財務会計などバックオフィス業務から電子申告までを一環として行えるワンストップサービスで、共通ポータルサイトを通して必要なアプリケーションを利用できるようになり、企業が入力した情報を活用して国税等の申告書作成を専門家のサポートを受けながら作成できるなどの特徴を持っているそうです。既に22社のアプリケーションが載っており、現在は全国各地で「J-SaaS普及指導員」の育成とセミナーを実施しているところで、サービス自体は平成20年3月末からスタートするそうです。平成21年度はアプリケーションの本格展開とサポートネットワークの本格展開を予定しているとのことでした。
J-SaaSの原点は中小企業支援策
経済産業省 SaaS活用基盤整備事業プロジェクト担当
勝瀬 典雄氏より、J-SaaS事業について今まで公に語られることのなかった補足的な説明のご講演をいただきました。
業界の視点から見たときに、J-SaaSを、なぜ国が考えたのか、どう活用してどうビジネスに展開していくのかについて、今まで十分に声明されなかったことについて説明。原点は中小企業支援策にあって、そこで中小企業に対する経営支援(コンサルや金融支援など)を迅速に行う仕組みが必要とされ、その際に経営情報をしっかりと把握している中小企業は非常に少なく、そこを解消する必要があるとのことです。
課題としてあるのは、日本企業の風土でネットワークを使ったサービスというのが、まだ受け入れられてないという現状にあるという点です。「国の論理」で作るのではなく、「民間の論理」で政策にのっとってマーケットを作っていかなければならないという観点から進行しているプロジェクトだそうです。ただし、情報産業主導型で進めるのも中小企業支援策でも無理だろうということで、国がインフラを提供し、ベンダーと一緒になって新しいビジネスモデルの構築とマーケットを作ることやりましょうというのが、今回初めて行われるプロジェクトということです。また素早く動けるように顧客を持っている専門家(ITコーディネータ、超小企業診断士、地域のパソコン教室、税理士など)をJ-SaaS普及指導員を育成してサービス提供をしていくことをしているところで、これはかなり戦略的に動いているとのことでした。
事業者にとってSaaSは「重い」
フィードパス株式会社
代表取締役社長
津幡 靖久氏より、「SMB(Small and Medium Business)におけるSaaS導入と活用」と題し、SaaSビジネスの現状と今後の見通しについてご講演いただきました。
まず関連会社であるサイボウズとの関係や自社製品についての解説の後、SaaSビジネスの現状として16ヶ月で約6倍の稼動ユーザ数になったものの思ったほどユーザが増えておらず、また勢いがないとの素直な感想を述べられました。ユーザ層の分析結果について、Webメールシステム「feedpath
Zebra」で1社辺り約30アカウント、サイボウズグループの安心感と価格、サポート体制の安心感で採用されているとのことです。SaaSそのものについては、新たな価値を創造するようなSaaSならではのサービスが登場しないと市場はブレークしないのではないかとの懸念があるそうです。
SaaS分野で先行しているネットスイートやセールスフォース・ドット・コムの例を挙げ、黒字になるまで非常に時間がかかり、ゼロベースから事業立ち上げるためには5年くらいの期間と多額の投資を覚悟する必要がありそうとのでした。またSaaS事業はパッケージより収益を上げることが難しく、コスト構造の違いを意識する必要もあるとのことでした。ビジネスモデルとしては「通信キャリア」に近いものがあり、新規顧客を獲得するために多額の投資が必要であったり、販売チャネルの育成が重要になるようです。SaaSビジネスの現状について、かなり具体的な話をされましたが、実際にSaaS事業を進めてきた立場から、今年辺りから着実にユーザへ根付くだろうとのことでした。
SaaSに対する疑念へ応えられるようなサービスを展開したい
株式会社オービックビジネスコンサルタント(OBC)
開発本部 部長
日野 和麻呂氏より、「中小企業向け業務システム 奉行 for J-SaaSのご紹介」と題して、J-SaaSに採用された製品の説明と、どのような製品展開していくのかについてご講演していただきました。
3月末のJ-SaaSスタートインに向けてすでに開発は終了しているものの、展開については試行錯誤の段階。奉行シリーズは幅広いユーザ層をターゲットにしてるものの、起業したばかりの企業やSOHOクラスなど、量販店でパッケージを購入している層には売りにくかったので、J-SaaSでは従来の奉行シリーズではカバーできなかった層へエントリーモデルとして位置付けるとのことでした。J-SaaS自体の大きな特徴は電子申告やE-TAXと連携できるところにあり、会計士や税理士と一緒にビジネスをしていきますが、損保などと組むなどの必要性も感じているとのことでした。
J-SaaSでの基幹系SaaSで求められているのは手軽で安いことで、ネットワーク遮断やデータを預けることの不安、Webの場合は操作性でWindowsなどのUIと比べ劣る、基幹系は運用率を限りなく100%に近づければならない、使うなら使うで簡単には止められないといった問題が基幹系SaaSのひとつのハードルとなっていると考えているそうです。OBCではクライアント認証型SaaSをJ-SaaSでは採用しており、クライアントPCにプログラムとデータを格納する方法で、手軽ですぐに使え、買うより安く済むようにしているとのこと。既存のアプリを単純にSaaS化しているのではなく、オンラインでの機能自動更新や画面上でのナビゲーション機能の強化、アンダーラインがひける電子ブックマニュアル、ネットワーク上のストレージへのバックアップ機能など、SasSならではの機能を実装しているということでした。
セミナー後の交流会で名刺交換

セミナー終了後、懇親会が開催され、講師の皆様、聴講された企業の皆様が各々に名刺交換をされました。小さな懇親会場でしたが、非常に多くの方が時間一杯まで熱心に相互にお話をされてました。
中締めとして、前川 徹 CSAJ専務理事に一本締めを行っていただき、無事終了しました。
今回のセミナーを開催するにあたり、各方面から多大な御協力を賜りました。この場を借りて御礼申し上げます。