経営者層向けグリーンITセミナー
〜ソフトウェア開発で実現するグリーンITの技術動向〜 開催報告
去る平成21年8月6日(月)、CSAJ会議室にて、「経営者層向けグリーンITセミナー」が開催されました。このセミナーは今年度発足したソフトウェア技術委員会グリーンIT研究会(主査:下野文久氏)が主催し、グローバル企業としてこの分野で先行されているインテル株式会社とマイクロソフト株式会社から講師を招き、グリーンITに対する企業としての取り組みや考え方、そして技術面でのグリーンITの実現について話をしていただきました。
インテルの最新技術を使い劇的な消費電力の削減を実現
インテル株式会社 技術本部 本部長 及川 芳雄氏より、「組み込みからサーバーまで − インテルのロードマップ、並列化技術とグリーンIT」と題し、PCの頭脳であるCPUベンダーの立場から、グリーンITとソフトウェア業界にも強く影響を及ぼすであろうCPUのロードマップについてご講演いただきました。
及川氏は、まず最初に、自社による環境への影響度合いの分析やこれまでのグリーンITへの取り組みを説明した後、新しい45nmプロセス技術によって実現できること(速度の向上や消費電力の削減など)や削減可能なエネルギー消費量は運用面や最新技術などを併用することによって激減できることを説明しました。具体的には184台のシングル・コアプロセッサを採用したサーバは21台のマルチ・コアプロセッサのサーバに置き換えられるとし、最短8ヶ月で投資を回収、最大9倍のサーバ台数の削減、年間エネルギー費用の92%が削減可能とのことで、プロセッサの進化によって様々な効率化が図れることを強調されていました。
また、及川氏はサーバ用CPU「Xeon」や組み込み用CPU「Atom」、デスクトップ用CPU「i7」などのマルチコアCPU、そして将来登場するコードネーム「Laraabee」といったメニーコアCPUなどのロードマップにも触れ、そのバックボーンとなるメニーコアと対になるソフトウェアの並列化について重要性を説かれました。これまでCPUの処理能力はクロック数の上昇に従って伸びてきましたが、電力と発熱の問題よりこれ以上のクロック数は上げられないところまで来ていて、替わりに今後はコア数を増やすことによる同時処理能力の向上が必要となります。ところがコアの並列化に対応したプログラムの並列化には、特有の難しさがあり、その問題点の克服のためのソフトウェア支援ツールの提供やコミュニティサイトを運営しているとのことでした。
マイクロソフトは2013年までにCO2を30%削減
マイクロソフト株式会社 最高技術責任者 加治佐 俊一氏より、グリーンITの取り組みと、それを支える技術について話をしていただきました。
マイクロソフト社は「全世界でマイクロソフト製品の売り上げに対するCO2排出量を2012年までに2007年比で少なくとも30%削減する」ことを掲げており、それを実現するために、「ITを活用したエネルギー効率の向上」、「技術的進歩の礎となる研究開発」、「環境に対する責任ある企業活動」を三本柱として取り組んでいるとのことでした。
一般向けには10月22日発売予定(SA契約ユーザー向けには提供開始済み)のWindows
7ではWindows Vistaより更なる省電力機能の向上が図られており、問題があって事実上使えなかった「Wake On LAN」やサービス起動タイミングの改善、パワーマネジメント機能の強化、各種割り込み処理をタイマー割り込みに統合するなどをしているとのことでした。他にもディスプレイの明るさ調節、Bluetoothのサスペンド、ネットワークの接続状態に応じた電源管理、DVD最盛時にはGPUを活用して効率化図るなど、表には見えにくい部分で、非常に細かい部分まで省電力化が考慮されていることが理解できる内容となっていました。
また、クラウドコンピューティングについても言及しており、世界各地に設置しているマイクロソフトのデータセンターもグリーン化を推進していて、水力発電のみを使ったデータセンターや雑排水を冷却システムに使用したデータセンター、外気利用のデータセンターの開設など、そして約2万コアを収納したコンテナ型サーバの導入といった、様々な工夫を凝らしているとのことでした。更にはマイクロソフト全社員9万人の内900人の研究員が従事している「Microsoft
Research」では社内外と連携した研究活動を行っており、世界各地にセンサーを設置して温度分布を可視化してみたり、コンテナ内のラックマウントサーバを効率よく冷却するための研究をしていたりします。ユニークな試みとしてインテル社の低消費電力プロセッサ「Atom」を従来の用途とは異なるデータセンター用のCPUとして使用するといったことも研究しているそうです。
グリーンIT研究会は並列化プログラミングのトレーニングを実施予定
最後に、CSAJグリーンIT研究会の主査である下野 文久氏より、閉会の挨拶を行いました。「ITが単純に便利な世界、というのは終わっています。今後は環境というものを意識することが非常に重要であると考えます」と述べ、グリーンIT研究会単独で活動するのではなく、他の研究会と連携を取りながら活動を進めたい旨、発言されました。また、ソフトウェアを活用することによりITのリソースを有効活用するという観点から、メニーコア時代に最適されたソフトウェア−−並列化プログラミングに関する各種セミナーを今後開催するとしました。
※CSAJグリーンIT研究会では、今秋からメニーコアに対応した並列化プログラミングに関する各種トレーニングセミナーを開催する予定です。企画がまとまり次第、みなさまにご案内申し上げます。