一般社団法人コンピュータソフトウェア協会

  1. Home >
  2. 最新情報 >
  3. 政策・ガイドライン等 >
  4. コラム >
  5. 専務のツブヤキ >
  6. 「専務のツブヤキ」~専務が行く⑴ 大阪府立大学植物工場センター~

「専務のツブヤキ」
~専務が行く⑴ 大阪府立大学植物工場センター~

2019.06.15

CSAJ 専務理事 笹岡 賢二郎

 先月、農業ICT研究会の視察に参加し、植物工場を訪問しました。大阪府立大学は受験の際に訪れたきりで、丁度40年ぶりの訪問でした。報告は、CSAJのホームページの以下のURLに掲載されていますが、本コラムでは私の視点でツブヤキたいと思います。 https://www.csaj.jp/NEWS/committee/agriict/190517_report.html

 最初に、増田 昇氏(大阪府立大学植物工場研究センター長)より、「人工光型植物工場の現在と今後」と題し、大阪府立大学内にある人工光型植物工場の取り組みや植物工場の将来について、ご説明いただきました。その説明で分かったのですが、 植物工場内の二酸化炭素濃度は、通常の大気中の濃度が400ppm程度なのに対して1500ppmに上げられている そうです。それは、植物(レタス)の成長速度を加速するためでした。聞けば、お陰で 苗をパネルに移植してから32日間で生育 し、毎日最大で6千株のレタスが出荷されているとのことでした。地球温暖化の観点から結構大変な濃度ではないかとも思ったのですが、増田氏はさらりと「この部屋に今これだけの人がいますから、丁度この部屋の二酸化炭素濃度くらいですかね」とお答えになりました。これを聞き、1500ppmと聞くと大変な濃度とびっくりしてしまったのですが、人間が普通に生活できる濃度であると分かりちょっと安心する一方で、でも 二酸化炭素濃度が上がるということは、地球温暖化だけでなく、地球上の植物の生育速度にも影響が出る んだと、今更ながら生態系に与える影響の大きさが分かった次第です。

 また、施設見学をしたのですが、建物が3棟立っていました。2つは経済産業省と農林水産省の補助金でそれぞれ建てられた研究棟、もう一つが民間会社(スーパー)に運営が委託されている商業規模の植物工場でした。 研究棟は一つになっている方が明らかに効率的な研究ができる気がしましたが、補助元との関係、大人の事情で分かれている のでしょう。植物工場は基本的に水耕栽培ですが、 根の部分に温度傾斜が必要な根菜類関係以外は何でも生産可能 (経済性が成り立てばの話)とのことでした。研究棟を見学して面白かったのは 水耕栽培に使う溶液ですが、ドジョウを入れて実験 していたことでした。鯉の餌を与えてドジョウを溶液中で飼育し、その糞尿を栄養にしているのですが、どうもドジョウの大きさと数が微妙にマッチしていない様子(養分濃度が足りない)でした。ただ、私的には成長して使えなくなったドジョウは柳川鍋用に出荷すれば一石二鳥ではないかと思いましたが、、、

 栽培には赤、青、白色の3色のLEDライトを使用していました。聞けば、 青と赤だけでレタスは育つのですが、それだとレタスの色が黒ずんでしまうので、バイヤーに高く買ってもらえない とのこと。色が違っても、レタスの成分は同じだそうですが、ある意味必要のない白色LEDも使用してレタスの色を新鮮に見えるようにしているとのこと。曲がったキュウリや規格外の大きさの野菜が店頭に並ばないのと同じ理屈に思えます。流通業者の慣習も改善の必要があるかもしれないと感じた次第です。

 屋上に太陽光発電が備え付けられていましたが、これでは管理部門の電力のみしか賄えないとのこと。一見、 全て太陽光発電で賄えれば理想と思われがちですが、それでは普通の農業並みの土地面積が必要となり、植物工場にする意味がなくなる とのこと。全体のコスト構造を見てみると、LED照明の電気代のランニングコストよりも、設備の減価償却や人件費にそれぞれコストの3分の一程度(固定費)かかっており、 植物工場の成否は、如何に高く売れる野菜を安定的に大量に出荷できるか (販売先の安定的確保も必要)にかかっていることが分かりました。

 農業ICT的には、植物工場での栽培ノウハウや管理制御のところで、AIやソフトウェアの出番がこれからたくさんありそうとの印象でした。これを読んでご関心のある会員企業の方は農業ICT研究会に是非ご入会下さい。最後に、「竜馬が行く」ではありませんが「専務が行く」、今後も出来ればシリーズ化していければと思っています m(_ _)m

 

筆者略歴

笹岡 賢二郎(ささおか けんじろう)

1961年生まれ、1983年に通商産業省(現経済産業省)入省、機械情報産業局電気機器課、科学技術庁、資源エネルギー庁、立地公害局、防衛庁、工業技術院、基盤技術研究促進センター、JETROクアラルンプールセンター、文部科学省、四国経済産業局などの勤務を経て、2005年7月より新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、2007年7月より九州経済産業局地域経済部長、2009年7月より中小企業基盤整備機構の業務統括役兼総務部長、2011年7月独立行政法人情報処理推進機構の参与兼セキュリティセンター長などを経て、2013年7月から東京工科大学にてコンピュータサイエンス学部 コンピュータサイエンス学科教授、片柳研究所所長、工学部 電気電子工学科 教授兼コーオプセンター長。2016年6月に一般社団法人コンピュータソフトウェア協会専務理事に就任。